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思考

ニルヴァーナで会おう

 社会を、正しく知覚しようとすれば、するほど、訳が分からなくなる。外で、けたたましいサイレンが、響く。部屋の中で、瞑想するみたいに、天井のシミを眺めていた。どうして、僕は、いま、ここにいることを許されているんだろう。あるいは、許しを得た命というものに、どれだけの価値が、あるんだろう。たぶん、今日も、どこかで、誰にも届かない声を押し殺して、耐え忍びながら、日々を送る人間が、たくさんいる。そこに、フォーカスしない言論は、嫌いだ。

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・金と権力
 富が、十分に行き渡っていない場所がある。困窮している者は、何を手にしたいと、思っているんだろう。もし、そのすべてが金と、権力だと決めつけるなら、たぶん、あなたは、この世界のことを、誤解している。黒人が、権威をもつことは、間違っている。同性愛者の、人権なんて、どうでもいい。障がい者が、選択できる人生は、たかが、知れている。標準からずれる人間は、無価値に等しい。それが、社会を窮屈にしていく。だから、僕は、はっきりと言う。欲しいのは、名誉じゃなく、不平等が、既に存在していることを認識する知性だ。

・世界は、すでに救済されているのか
 この一瞬が、気持ちよければ、それで良い。これまでの歩みや、過去に縛られるのなんて、まっぴらごめんだ。韓国との歴史問題、そんなの、知ったこっちゃじゃない。そう考えると、ある意味、生きやすい。だって、全体を見渡すことをしないから、自分が搾取されていても、気付かない。救済を求める声が、かき消されていく。だけど、いったん、立ち止まる。「普通である」ということが、一番いいとする風潮。必死になって、規範を守り、他の人と同じでなければいけないプレッシャーに苦しむ。そんな、生き方を、ぶっ壊してく。それこそが、ここで発信しなければいけないことだと思っている。

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 「世界」という言葉が、含有する意味って、なんなんだろう。遠い異国のことかもしれない。あるいは、宇宙のことかもしれない。でも、まちがいなく、その中心にいるのは、自分という存在だ。僕が、ここで、噛みしめている命は、いつか、尽きていく。多種多様な欲望も、憧れも、理性も、なにごともなく、消え去っていく。だから、もし、永遠を手に入れることができなくても、ニルヴァーナ(死後の世界)で、お会いしましょう。きっと、それが、生きていくことの、醍醐味だと思うから。

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思考

生きる理由

 有限の命。死を予感した瞬間。今を生きる理由を探すけど、みつからない。僕にも、ちゃんと最後が来るとおもうと、安心する。狂気に満ちた空気に、おかされていく。道ゆく人は、みんな、なにも疑わずに、ただ、明日を見つめていた。社会の付属物かであるように、従順に、事をこなしてゆく。普通のように、振る舞えない自分は、たぶん、痛々しい。

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・線引きという暴力
 今の立ち位置は、どうやって確立されたのか。僕は、とくに努力した覚えはない。だけど、食うことに困らず、住む家もある。だけど、世界は、そんな人ばかりじゃない。十分に栄養をとれない子ども。路上で暮らすホームレス。空爆に怯える民衆。激動していく社会に取り残されたように、ただ、我慢を強いられる。
 例えば彼らを弱者と、呼ぶ。そうやって、線引きをしたとき、ちっぽけな僕は、突如として、強者になる。こっち側と、あっち側。その境界は、いつからでき、何を基準に、人間を分断しているのか。貧困に陥るのは、努力が足りないからだという言説は、嫌いだ。自分の能力が高いから、それだけの見返りは当然である。だけど、あなたは、ただ、環境に恵まれていただけなのかもしれない。

・虐げられし者の声
 老後のために、蓄える。いざ、困ったときに、準備をする。そうしないやつは、そこらへんで、野垂れ死ねばいい。そんな世の中は、はたして成熟した社会と言えるのか。何者もなれなかった、何のとりえもない、どこにでもいる人間が、誰にも迫られることなく、死ぬまで、豊かに生きることができる。そんな世界が、好きだ。
 みんな、どこかしらは、不完全なはずである。それが、生きていくのに、致命的だったり、案外そうでない人もいる。いかに、抑圧される側の声を、表出させるか。その声が、うねりをあげたとき、社会という怪物に、抵抗できる。

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 結局、僕がここで、言いたいことは、社会は、いくつもの階級に分かれていて、そこで暮らす人間は、けっして全員が、幸せじゃないということだと思う。じゃあ、どうしたら、良くなるのかを、問い続ける。それが、生きる理由になる。

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記憶の残滓

 社会が、変動していく。それは、べつに、ここに限ったことじゃない。世界が、急速に、しぼんだり、膨れ上がったりしている。価値観が、多様化していき、制度やしくみが、新しくなっていく。たぶん、その根っこにあるのは、個人が、自由になろうとする意志だ。僕らは、自分を縛るものを、遠ざけ、選択できる権利を主張してきた。その結果、ありとあらゆるものが、流動化していく。 

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・声をあげる
 芸能人が、政治の話をすると、煙たがられるという風土は、本当にださい。これから、国を、どんなふうにしていくのかを、議論するのに、いろんな知識はあったほうがいいかもしれない。(そもそも芸事をしているからといって、知識がないとすることじたい、ナンセンスだ。)言いたいことを、言えばいい。間違ったら、出直せばいい。もし、あなたは、政治について、なにも理解していないのだからと言って、自分とは、そぐわない意見を封じ込めようするなら、それこそ、間違っている。
 たぶん、次の世代に、何を残していくべきかという視点が、欠けている。いまの子どもたちが、大人になったとき、こんな社会だったら、生きにくいよねっていう部分を、変えていけばいい。なのに、今の政財界のトップの多くは、利権にぶらさがって、富を吸い尽くそうとしているみたいだ。権威に、いつまでも、ひれ伏す民衆を、演じるのも、飽いている。だから、声を、あげるべきだ。

・無常
 なんで、そんなに、怒っているんだろう。容赦ない言葉が、弱者に、向けられる。たぶん、満たされないと感じる、マジョリティーの叫びと、僕は思っている。自分とは、立場がちがう人間を、受け入れることができず、排除していく。変わっていく情勢に、なす術もない。だけど、無常に逆らうことはできない。一切のことは、生まれては、消えていく。
 ひとりひとりが、抱えるバックボーンは違う。生まれ育ってきた環境も、異なる。だけど、人は、何かしら、過去に執着している。忘れられない出来事について、言葉にしようとしても、ままならない。そして、伝える術を探すように、生きて、十分に語ることのできないまま、死んでいくのだ。
 
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 家族で過ごした、断片的な思い出が、記憶の残滓として、眠っている。それは、大人になった今も、大きな塊になって、僕という存在の柱として、機能している。時が進むにつれ、以前よりも増して、自分を形成する要素について、考えるようになった。ただ、それは、年老いた人間になっただけなのかもしれないけど。

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思考

涙の霖(ながあめ)

 今まで、はっきりしてなかったことが、明らかになっていく。けれど、それで、全てを知っているかのように、語られる言説に、説得力は、ない。知るということは、知らないことが増えていくことと、同じ意味だと思う。社会で起きる、様々な出来事は、ここで生きる、虫けらみたいな弱い僕の、頭の中と、繋がっている。苦悩する人々の声を、無視し続ける、この世界が、嫌いだ。もちろん、自分を、含めて。

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・消費と排除
 どうして、いつも、正常な市民は、消費することが、求められるんだろう。経済が、大きな顔をして、まるで、世界の在り方を、決めつけてしまっている。そんなのただの、ひとつの、考え方にすぎないのに。お金を稼いで、欲しいものを、手に入れる。途切れることのない、欲望が前提とされる社会は、息苦しい。買いたいものなんて、何一つないと言うことが怖かった。そうすれば、役に立たない人間として、そそくさと排除されるみたいで。
 行き過ぎた消費市場は、歩みをとめようとしない。たぶん、どんなに地球環境が破壊されようとも、資本主義は、機能していくんだと思う。ただそれは、労働搾取、戦争、病気、貧困、飢餓、多くの人間の、犠牲によってなんだと、はっきり言うべきだ。格差が、拡がっていく。なんらかの、転換が必要だ。だけど、代替案を、だれも、提示できない。混沌とする世界で、ただ、もがいている。

・ちっぽけな正義
 無差別殺人が、おきる。なんの落度もない人が、命をおとす。メディアは、犯人の生い立ちを、紐解こうとする。そんな人間をつくり出してしまった社会にも、責任があるという側と、感情に押され、さっさと死刑にしてしまえばいいという側に、分断される。生きづらさの正体が、分かれば、納得もできるだろう。だけど、誰しもが、うまく周囲にとけ込めない孤独や、全て自己責任にされてしまう、行き場のない怒りの所在を、明確にできないでいる。
 遺族の感情を、考えれば、極刑が妥当であると誰かが言う。刑罰を科す司法について、詳しいわけじゃない。ただ、裁判は、憎しみを果たすためにあるシステムなんだろうか。ここが、法治国家であるならば、法に定まられたやり方で、刑を決めればいい。正しいのかも分からない正義を、振りかざすことができるほど、僕らは、賢くもない。

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 これまで、流されてきた涙が、霖になって降るとき、それは、世界の終わりが近づいてきた証拠だ。あなたが「自分は、普通である」という根拠は、何なんだろう。なんなら、僕だって、世間の喧騒から離れたところで、思想や哲学について、考え込んでみたい。だけど、生きるのって、もっと泥臭い場所で、這いつくばることしかできない。目の前にある社会は、そう、甘くはない。だけど、たとえ、腐敗しきった世界でも、あなたの思考が、止むことはない。

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思考 社会の出来事

分け隔てなく生きる

 自分らしさを、表現することは、秩序を壊すことだと思う。いままで存在しえなかった価値を見出す作業は、孤独に包まれている。どうせ道徳や正義なんてものは、マジョリティーの言い分にすぎない。だから、もし、この世界が、支配する側と、支配される側に、分断されるなら、後者は、抵抗すればいい。僕らは、生きている。言うまでもなく。人間であること、女性であること、弱者であること、あるいは動物のひとつに過ぎないこと、ありとあらゆる生命が、今日も躍動している。

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・なにを言祝ぐべきなのか
 イランとアメリカの対立が深まり、憎しみの連鎖が、舞い戻ろうとしている。「戦争」という体験をしないまま、大人になった世代が、平和を語ってはいけないのだろうか。命が、軽んじられ、国のために全てを投げ打った彼らは、何を思い、死んでいったのか。終戦を向かえたときの、不思議な安堵感を、僕は想像する。もう、戦わなくてもいいんだという思いが示す方向に進めばいい。この先に日本が、言祝ぐべき進路は、空爆のニュースを見た時の、一人ひとりの感情の内側に眠っている気がする。

・相模原殺傷事件について
 みなの命に平等に価値がある。そんなあたりまえの考えが、根本から揺らいでしまったのが、この出来事だったと思う。公判が始まり、事件の詳細が、明るみにでるとき、世界に、ひとつのひずみが生じる。その衝撃波は、螺旋状にゆっくり広がっていく。さて、僕らはいったい、だれに憤りをぶつければいいんだろう。命に線引きをしては、いけないことは分かる。他人に生きる価値があるのか、ないのかを、決めることはできない。たとえ誰かが、無意味であると判断しても、それが、命の生き死にに関わってはいけないということを、はっきり言う必要がある。

・なぜ大学教育が行われるのか
 それぞれの大学の発足の理念なんてものは、僕は知らない。でも、決して大学は、企業が求める人材を育成する機関に成り下がってはいけない。上からの命令に、文句を言わず従順に従い、サービス残業もいとわない若者は、たしかに都合がいいだろう。だけど、教育って、人を育てるって、そんな目的のもとで行われていいのかを、問いなおすべきだ。
 科学技術が進歩していく。生まれる前から、障がいを持っているかを、判別できるようになる。優秀な遺伝子だけをかき集めて、人間をつくりだす。そんな時代に、誰が、正しいか、間違っているのかを、導き出すのか。そんなことは、専門家に、まかせればいいと、あなたは、思うかもしれない。だけど、少なくとも、教育の目指すべきところって、あくまでも、自分とは立場の異なる他人に、優しくできる人間にすることなんじゃないかと僕は、思っている。

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 人間は、もうすでに、幾度となく失敗を繰り返している。優生思想における批判を、もう一度、やり直せばいい。僕が、ここで述べてきたことは、いわゆる、どうやって分け隔てなく生きることができるかということだ。宗教や、政治理念の違う国や人間にたいして、どうアプローチしていくか、障がい者と健常者を、違う教室で学ばせることに何の正当性があるのか、他者と自分との垣根をどう、壊していくのか。
 もちろん、そこには「恐怖」があるだろう。自分とは異なる他人を、疎ましく感じることは、誰にでもある。だからと言って、いがみ合う必要はない。まして殺しあうなんてことは、途方もなく馬鹿げている。もし、僕らが成熟した社会を生きているならば、過去の過ちに学び、どう共生していくかを、模索していくべきだ。

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思考

年を経て生まれる憂鬱について

 幼い頃の、記憶と呼ぶには、おぼつかない、暖かみのある場面。僕は、たしかに、この世界に祝福されて生まれてきたことを教えてくれる。両親の愛という言葉が、陳腐ならば、他になにか変わりの言い方を、模索しよう。ただ、それは、海面に浮かぶペットボトルのゴミを見つけるくらいに、困難だけれど。
 きれいなものだけを、見てきたんじゃない。裏切り、暴力、嫉妬、憎悪、それら全てが折り重なり、ひとつの社会となりうる。ただ、大人になるまでの間、家族という共同体のなかで、黒々しい感情を排除してきたに過ぎない。そのシステムを、「魂の保護」と、僕は呼んでいる。

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・奇譚集
 ここで、年を経て生まれる憂鬱について、語らなければならない。べつに、スピリチュアルに関心が、あるわけではない。それでも、世の中には、偶然という言葉では説明できない、奇譚な出来事が起こりうる。例えば、夢に出てくる死者たちが残すメッセージ、前世の記憶をもつアフリカ人、死の瀬戸際から蘇生した病人、宇宙から飛来した謎の隕石、語り尽くすことのできない、不思議な物語は、幾度となく、生まれては、消えていく。

・リアリスティック
 ただ、へんに大きな顔をする、リアリスティックな日常を、ぶっ壊したい願望がある。子どものときの、無限に世界が広がっていることを知覚していく感動を、もう一度、味わいたい。クラスの席替えで、好きな子が隣になったときの、死んでもいいくらいの思春期の高揚を、再び、享受したい。そして、それは、もう叶うことはないんだなと、悟ることが、大人になることだと、僕は思う。そこから生まれる憂鬱を、持て余しながら送る人生は、せめて静寂に包まれてほしいと望む。生きるとは、そういうことだ。

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 ブログを書く意味について、考える。僕ら、国民は、階層に分けられている。金持ちもいるし、貧乏もいる。下級や、上級と言われることがある。もし、この世界が、一部の成功者によって支配されているならば、不利益を被る側は、抵抗しなければならない。たとえ、抑圧されて身動きができない立場にあったとしても。だから、こうして、文章を書く。それで、重圧にたえるあなたの重荷を、少しでも軽くできたら、そんなに嬉しいことはない。

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思考

心の違い

 人間の性質を、まざまざと浮き彫りにする歴史は、もうだれにも目に触れない海の奥底に沈んでしまったかのように、ひからびてしまう。人と人が争い、殺し合いまでしてきた末に、訪れた平和の意味を、置き去りにし、相も変わらず、自分だけが幸せになろうとする。

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・アナキズム
 権力や権威自体が、悪いことではない。国単位の大きなものを統治するには、それが必要になるんだろう。この世界が、不条理であふれ、不公平に扱われることを、僕らは肌で、感じている。アナキズムに傾き、革命を志し、失敗を重ねたのは、けっして意味のないものではない。問題は、公人であるはずの彼らが、大衆の私財を奪うことだけに、集中していることだと思う。それも、少数の蓄えがある人ではなく、切り詰めて生活する、一般市民から、搾取しようとする。

・糊塗し続ける僕らの行く先
 社会福祉が行き届いて、老後も安心して暮らしていける国にしたいと、切に願っている。良いことをしていく、というシンプルな方針を、疎かにし、いかに税を絞りとるかに躍起になる。お金は、湧いて、でてこない。僕にだって、分かる。それでも、失敗を糊塗し続ける先に待ち受けているのは、絶望でしかない。それを、予期しているのは、けっして、保身に走る、頭のよい政治家だけではない。みんなが、わかっている。だけど、必死になって、平穏な日常を守ろうとしている。その努力を踏みにじるな。それを、僕は言いたい。

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 一度でも戦争によって、人生をないがしろにされた者と、生まれてから、ずっと自由を保持してきた者との間にある溝は、埋まらない。同じ姿、形をした人間でも、その中身は、まるで別物のように存在している気がする。それを「心の違い」と言葉で片付けることは、簡単かもしれない。どの時代に生まれてきたか、どの身分に属していたのか、どんな社会環境だったのか、まるで異なる空気を吸っているヒトを、同じ生き物だとするならば、それは横暴ではないだろうか。”平等”という概念がうまれてから、もういくぶん、時は経つ。
 資本主義が、行き詰まり始めたのは、別に、今に始まったことではない。商品を、いかにコストを抑えて、できるだけ多く生産できるか、それに踊らされて、とくに吟味することなく、手当たり次第消費する客、そして、余ったものを大量に廃棄する社会は、もう無理がある。豊かになることは、本質的に、先に期待できない制度を、維持することではない。少しづつ変わり始めた先に待つのは、どんな社会か。それを見定める作業が、必要だと思う。

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最後の砦

 自分の力で、人生を切り開くなんて、とてもかっこのいい言葉だ。それが、できたら、何も苦労なんてしない。目に見えない力に、頼ってしまう。いっそのこと、あなたの運命は、もう初めから、決まっているというお告げが、あれば、僕はすんなり、受け入れてしまうだろう。それほど、生きることは、過酷と、無慈悲に溢れている。

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・正体は、いずこ
 生きづらさについて、僕らはもっと、おおっぴらに語らなければならない。絶望のなかで、生き抜こうとしている名もなき誰かが、諦めに辿り着き、自ら命を絶つ。身寄りのない浮浪者が、助けを呼べずに、ひっそりと路上でことぎれる。生活に困ったシングルマザーが、心中しようとする。彼らを、追いつめたものの正体をつきとめる作業を避けるように、世間は、なにもなかったかのように、忘れていく。

・競争が全てなのか
 そんなの自分のことで精一杯だ。他人に優しくしているうちに、置いてけぼりをくらう。明日が、我が身だ。相手を蹴落とさなければ、自分が貧乏暮らしだ。できることなんて、ない。責任を負うなんて、まっぴらごめんだ。お金を、生み出さない行為に意味なんてないし、やるだけ無駄。徹底的にコストを切り詰めて、利潤を最大化しよう。だから、非正規雇用者が、生活できなくても、構わない。それが、資本主義の国の在り方だ。

・宿痾
 これは、もう僕らの宿痾だ。なにからなにまで、株式会社のような仕組みにしてしまった過ちの歪みが、表面化している。利益を追い求めることを、いけないとは思っていない。別に、好きにやればいい。例外的に、無欲さや公徳心を求めるのも酷だ。問題は、市場原理主義が、いまある全ての組織の基本みたいになっていることだ。でも、それじゃあ、国は良くならないし、弱者を救ったりはできない。ここで、僕が、はっきり言っておく。

     ★    ★    ★

 「夢」や「希望」が、あまりにも、僕とは関係のない言葉になった。何者かになろうなんて、はなっから考えてはいない。他人に迷惑をかけてはいけない。お上の指示に、逆らってはいけない。税金を払いなさい。良き市民でありなさい。僕を縛りつける号令が、言霊のように降り掛かってくる。息の詰まる社会で、だれしもが、声を上げることなく、必死に小さな幸せだけは、守ろうとしている。最期の砦として。
 いまのやり方で、富を蓄えられている人は、そりゃ変えたくないでしょ。既得権益を守るために、現状維持を望むのは、あたり前だ。そして、波風をきらう、従順な日本人は、トップのいうことに素直にきく。それは、とても住みにくい社会だと思う。政治って、いったい誰のためにあるのかを考え直してほしい。

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死神になりたい

 蝉の鳴き声が、じんじんと耳にさわる。今年もあいかわらす、夏が巡ってきたことを知る。どうして、人は、まわる季節のなかで、同じような過ちを、繰り返すんだろう。傷つけるつもりはないんだけど、本心を語ることは、たぶん、誰かを悲しませることになるんだと思う。波風をたてることを、ひどく嫌う僕らは、それでも、本当のことだけを探していこうと決めた。この、おいしげる緑と、ふりかかる日差しのなかで。

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・戦争について
 センシティブな部分に切り込むには、勇気がいる。そこに潜り込むほど、無知であることを知らざるえない。けれど、戦争について、考えることは必要だし、生まれ落ちた国の成り立ちや歴史から、学ぶべきことは、たくさんある。たぶん、原爆が、ヒロシマとナガサキに落とされたことは、だれもが知っている。それから74年経ったいまでも、その日、一瞬のうちに、なんの落度もない人間が、犠牲になった事実を顧みることを、意味がないとあなたが言うならば、たぶんそれは間違っている。

・まともであれ
 アメリカの下した決断が、良かったとか、間違っていたとかを議論するつもりはない。(というか、僕には分からない。)たぶん、いろんな歴史観があり、思想があり、考え方がある。戦争で散っていった勇敢な命をたたえ、愛国心をもつ人だっているし、戦争犯罪について反省すべきと言う人もいる。政治的立場が、右に偏ったり、左の思想に影響される人もいる。混迷する社会のなかで、幸せに生きることが困難な時代に、僕らははたしてどんな未来に、辿り着きたいのか。それを示そうとするまともな大人は、意外なほど少ない。

・アメリカが、好きか、嫌いか
 令和を生きる若者にとって、今更、アメリカを憎むべきだという言論はリアリティーがない。それよりも、震災のときに「トモダチ作戦」を展開した姿の方が、印象に残っている。西洋の文化を取り入れた日本で教育をうけた僕は、自由と平等と民主主義を愛するアメリカを嫌う理由がみつからない。

・自由を求めて
 資本主義のなかで、すべてがうまくいってはいないが、ある程度みんな幸せに暮らしているじゃないかという事実は、たぶん拭いきれない。今もそうだけど、ただ国家とか、政治とかを差し置いて、自由になりたかった。できるだけ個人の価値を高めてきた。その結果、共同体や家族が解体していく。不安定な経済情勢を前に、ただ貧困に嘆くことしかできない僕らは、滑稽にみえる。それが「時代」というものだと、切り捨てるならば、団結して、意義を唱え、大きな体制側に、声を上げるべきだろう。

   ★    ★    ★

 死神が降臨するとき、たぶん、それは冬の時期だ。日が差しかかり、薄くもやのかかった朝焼けの寒い一日の始まりに、彼は登場する。魂の管理を取り仕切る仕事は、この世のどんな職業よりも、たぐいまれな才能を要する。紛争が起きて、たくさんの人が死んだ日は、忙しいのだ。大勢を黄泉の国へ、移送するから。そんな妄想にふける、8月の午後。まだ、暑い日は、続くだろう。死神が、運んでいった精霊たちが、深い眠りのなかにいることを願って。

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思考

レストルーム

 宙に舞う綿ぼこりが、まるで、意志を持ったかのように、風に揺られている。それの行き着くさきは、たぶん、この地球上のどこでもない別次元だ。そして、最期には、役目を果たしたかのように散っていく。僕も、そんな風に、生きてみたいと願うのは、ややロマンチシズムに偏りすぎだろうか。

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・労働者として
 本当は、もっと夜更かししたいけど、明日も仕事だから、早く床につく。自分の時間を自由にすることさえ、ままならない現状は、変わりそうもない。ずっと、僕らを縛り付ける労働が、暮らしのなか存在することが前提とされる。どうして、働くことに多くの時間を費やしてきたのかを、年を取って気付くにちがいない。それよりも、するべきこと、学ぶべきこと、育むべきことが、あったはずなのに。その日暮らしの金を稼ぐことで精一杯の労働者は、息つく暇もなく、死んでいけというのだろうか。

・トリガーが呼びだされるとき
 突然のようにトリガーが呼び出され、それに端を発して、言葉をやめない人間が語る真実は、静かに誰かの胸の奥に仕舞われる。みずから語ることによって、トラウマのような出来事が表面化する。そんな瞬間が、好きだ。だから、他人の語りを、蔑ろにするな。どんなにどん底にいても、その環境のなかで居場所を見つける機能が、幸か不幸か、僕らには備わっている。苦境にたつ者はみな、自分の努力が足りないからだと、言いくるめられる。でも、本当に、この社会を支えているのは、まぎれもなく日々、汗を流して働く労働者であることは、明白だ。

・弱くある
 生産性を突き詰め、利益を最大化することに躍起になる僕らは、すこし疲れている。資本主義の世の中なんだから、仕方ないじゃないと、あなたは言う。行き過ぎた市場主義は、なにもできない者を、まるで悪として扱う。でも、その主張にたいして、いくらでも反論の余地はある。何もできないことを、声高にして訴えればいいし、それでも幸せになるんだという意志を示せばいい。弱いものは駆除されていき、賢いものだけが生き残るのが、この世の常というのならば、それはもう、野蛮な生き物でしかない。

     ★     ★     ★

 子どもをつくらない同性愛者だって、働くことのできない障がい者だって、生き抜いていかなければならないのだ。この荒れ狂う大地の上を、あるいは、この近代という時代を。でも、その道のりに、休息の場を設けられるはずだ。政治が役割を果たせばいいし、隣人の手助けを借りたっていいし、行政のサービスを受ければいい。どうか、死ぬなんて思わないで欲しい。シンプルで、あたり前のメッセージを発信するのは、退屈かもしれないけど、重要だ。世界が少しでもよくなるようにと願わずにいられない誰かの善意が、見ず知らずの人を救う。そんなことが、あってもいいと思う。