梅雨の始まりを告げるみたいに天気は崩れ、地面はしっぽり濡れている。また夏が来るのだ。暑さを嫌がる同僚を横目に、僕はひょうひょうとしている。照りつける日差し、長い1日、新緑の匂い、うるさいくらいの蝉の声、全てここが世界の果てであることを報せる。やっぱりこの季節が好きなんだと思う。
★★★
・その恐怖について
僕だけが社会の異物のように排除されていくのは、酷い有様である。マイノリティーを生きることは、ほんのささいなつまずきである。おそらく世界はもっと複雑であろう現実は、宇宙の砂つぶのように忘れ去られていく。世の中のルールって何なんだろう。私は普通のどこにでもいる人間ですと、自分の正しさを振りかざす。その行為こそが野蛮で、僕の嫌いなことのひとつだ。
変わり者は存在してはいけないと誰からか教わってきたから、そのように事は進むのだけど。聾唖者は職場にいては、効率よく仕事が進まない。言葉の通じない外国人は国に帰るべきだ。障がい者は子どもを産むな。狩られる側のそこはかとない恐怖について、もっと論じられるべきではないか。可能性を奪うな。ここにいると声をあげ続けるのにも疲れた。
・ホームに帰る
どうやら絶望から諦めに転じて、死を選ぶ人がいるようだ。それも世界の一部だから受けいれてやろう。(ほんとうはそんなのは嫌だ)このぎすぎすとした息がつまる場所から、どんな言葉を紡ぐべきなのか。丁寧に社会をやっていくしかない。浅はかな暴言を吐く輩の相手なんてしたくない。逃げたくもなる。たまにパンチを打つ。そうやって、生きのびてやろう。
非凡か平凡かはどうでもいい。というかお前はもうまともに、みんなと同じように人生をやっていけないことに気付いている。それならそそくさと支度を済ませて、旅に出よう。荒波に体を揺らし、強風に足元はおぼつかない。傷ついて、涙を流す夜もある。でも、やっていくんだよ。悔しい思いは、忘れるな。理不尽な境遇に抵抗せよ。疲れたら、ここに帰ってくればいい。それぞれのホームに。
★★★
淡々と過ぎる日常に祝杯を。戦地で暮らす民衆に祈りを。ぎりぎりを生きるお前にエールを。僕は優しくなんかない。自分のことで精一杯だ。やられっぱなしはしゃくだから。選択することは、ときに武器になる。奴らは、弱いやつは決断なんてしないだろうと考えている。その裏をかけ。幸せを渇望せよ。自由を生きることは、そういうことだから。